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東野圭吾「危険なビーナス」を読む[相関図付き]~東野版「どっきりカメラ」

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どうもです。注目の本を1冊じっくりと解説していきたいと思います。今回は東野圭吾氏著の「危険なビーナス」を取り上げます。

言わずもがな小説を出せばベストセラー。そしてメディア化もされるということで、最近では「祈りの幕が下りる時」「ラプラスの魔女」が公開になりました。この先も「人魚の眠る家」が11月に公開予定、2019年には「マスカレード・ホテル」「パラレルワールドラブストーリー」と映画化が決まっています。そんな中、おそらくメディア化されないだろう長編小説、「危険なビーナス」をあえて取り上げてみようということです。

Contents

あらすじ

手島伯朗は動物病院で院長の代理を務めている。そんな彼の仕事中に”“と名乗る女から電話がくる。彼女は伯朗の弟である矢神明人と極秘結婚したことを告げるが、同時に彼が行方不明になっていることを話す。明人と楓はシアトルに在住していたが、明人の父である矢神康治の病状が極めて危険であることから帰国していたのだ。矢神家とは疎遠になっていた伯朗は、見ず知らずの楓が一人で見舞いに行くと怪しまれることから、しぶしぶ見舞いに付き合ってしまう。更には親族会にも出席する羽目になり、接触することを拒んでいた矢神家の内部に入ることに。そこでは遺産相続をめぐってのバトルが繰り広げられていた。

矢神家に明人の失踪を隠す一方で、伯朗は明人の手がかりをつかもうとするが、次第に楓に対して心を惹かれるようになってしまう。そして楓への思いと明人を捜す使命のジレンマで仕事にも影響が出始めるように…。

果たして明人はどこへ消えたのか。物語は康治が隠していた研究の謎、そして16年前に起きた伯朗の母・禎子の死の真相が絡み、あっと驚く仕掛けが待ち構える。

登場人物・人物相関図

この小説はとにかく矢神家の登場人物がやたら多く、しかも血縁関係が非常にややこしいので家系図にして表してみました。これで分かりやすくなるでしょう。

  • 主要人物
    • 手島伯朗(動物病院院長代理・養子に入らず矢神家とは縁を切っている)
    • 矢神楓(元CA・明人の妻)
    • 蔭山元実(動物病院助手)
    • 池田幸義(動物病院院長)
    • 兼岩順子(禎子の姉)
    • 兼岩憲三(順子の夫・元数学教授)
    • 手島一清(伯朗の実父・画家、脳腫瘍で亡くなっている)
  • 矢神家
    • 矢神明人(伯朗の弟・IT企業勤務・現在失踪中)
    • 矢神康治(明人の実父・伯朗の父ではない。死期が迫っている)
    • 矢神波恵(康治の実妹)
    • 矢神牧雄(康治の異母弟・研究員)
    • 支倉祥子(康治の異母妹)
    • 支倉隆司(祥子の夫・介護ビジネス経営者)
    • 支倉百合華(祥子と隆司の娘・ブックデザイナー)
    • 矢神佐代(康治の父・康之介の愛人、のちに養子に入る・銀座クラブのママ)
    • 矢神勇磨(佐代の子供、のちに養子となる・青年実業家)
    • 矢神禎子(伯朗・明人の実母、16年前に”事故死”した)

この康之介という男がとにかく矢神家を繁栄させるためにあの手この手を使ってるのが分かりますね。すごいのは奥様がいるのに、愛人との間にも子供を作り、二人ともを養子に入れるという荒業。そこまでして総合病院を継ぐ後釜を作りたかったんでしょう。逆に妻になった女たちも財産目当てで近づいてるというのがよく分かりますね。互いの醜い利害関係で成り立つ矢神家。しかしながら勇磨も明人も病院を継ぎませんでした。矢神家の地盤が没落していることを感じていたんでしょう。今や二人とも違う仕事で順調なキャリアを積んでいますしね。

解説

康治が研究していたのはサヴァン症候群?

伯朗は楓から、矢神康治がサヴァン症候群の研究をしていた話を聞きます。そもそも禎子とのなれそめが伯朗の父・一清の遺作を見て、サヴァン症候群の特徴があると近づいたのがきっかけでした。しかし伯朗は父がそのような症状を持っていたとは到底考えられません。さらに矢神家の人間の話から、このなれそめ話が嘘であることを知るのです。

また一清は死ぬ間際にそれまでの絵と大きく異なるフラクタル図形のような絵を描くようになっていました。この変化に至った理由とは何なのか。康治が研究していたサヴァン症候群との関連は?物語が進むにつれ、伯郎が今に至るまで康治を父と認めず、矢神家の養子に入らず、現在の動物病院への道に進む大きなきっかけとなったある出来事が大きく絡んでくるのです。

勇磨の暗躍…その裏は

伯朗の幼少の頃から強烈な印象を残していた勇磨。軽いような性格ではありますが、実業家としての能力も高い切れ者です。そんな彼が楓に接近することで伯朗の胸の中に嫉妬が芽生えます。

ところが楓が伯朗からの電話に応答しなくなったある日を境に、伯朗と楓だけでなく、勇磨も明人捜しに参加するように。この間に楓にどういう変化があったのか、なぜ楓は勇磨に明人の失踪を告げたのか?ギクシャクする二人が交わり明人捜しに進展は出るのか?

16年前の禎子の死の真相は

明人が子供のころから気にしていたのが、母親である禎子の事故死。16年前に禎子の母の家の風呂場で溺死しているのが発見され、当時事故と断定されていました。しかし明人は鍵のことや細かな点で腑に落ちないところがあり、それを子供のときの伯朗に話していたのです。今でもそのように考えているのでしょうか?

しかし、手掛かりとなる当時の家は取り壊され、更地になっているという写真が伯朗や矢神家に届きます。果たして手掛かりが残っていない中で禎子の死の真相は突き止められるのか?明人の失踪とのかかわりは?

感想

最初に読んだ印象は「どっきりカメラ」だなと思いました。「どっきりカメラ」はあらかじめターゲットと仕掛け人、その内容が提示されていて、視聴者は仕掛けを理解した上で成り行きを楽しむわけですが、この作品は仕掛け人も、仕掛けの内容も提示されず、気が付くと主人公のみならず自分たちもドッキリのターゲットにされていた、騙されたという作品になっています。

あとウラムの螺旋とかフラクタル図形といった数学・科学的エピソードを入れるところが東野圭吾らしい作風になってますね。一方ミステリーとしては泥棒が普通に家の電気をつけて物色するのか?とか、スマホを活用しているんだったら、Google Earth使えばあの写真があれのもバレるでしょ?などという細かいツッコミどころもあって、ライト感覚で楽しめばいい作品なのかもしれませんね。なんたって肉感的な楓のMっぷりにやられっぱなしの伯朗というのも面白かったですね。

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