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日野草「BABEL 復讐の贈与者」あらすじと感想(人物相関図)。悪VS悪、悪事銀行との対峙

BABEL 復讐の贈与者 (角川文庫) [日野草]

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どうもです。注目の本を1冊じっくりと解説していきたいと思います。今回は日野草氏著の「BABEL 復讐の贈与者」を取り上げます。

この7月からドラマ化されることが決定しているこの作品。シリーズものとなっていて「GIVER 復讐の贈与者」「BABEL 復讐の贈与者」「TAKER 復讐の贈与者」の三作から成り立っています。今回紹介する「BABEL」はその第2弾ということで、新たなる展開を見せます。

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テイカーと呼ばれる少女が作り出した「復讐代行業者・援助者(サポーター)」が、依頼人からの”復讐の依頼”を受け、過去に負い目を抱えたターゲットに迫り、ある「最終目的」を達成するために、その人物の「一番の弱み」を利用し、残酷なまでに追いつめていくという作品群。コンゲーム的な要素が強く、読者も騙される、残酷な「ノワールどっきり」といった趣があります。それぞれの作品で主役が異なり、誰が依頼人なのか、どういった理由で復讐されるのかという点が最後に明らかとなり、スカッとするよりはジトーッと後味の非常に悪い作風となっています。「怨み屋本舗」「外道の歌」といった復讐代行漫画はありますが、小説でこの世界を表現するのはあまりなく、「復讐代行業者」を主体として描かない分、ハラハラと意外感が楽しめる作品になっています。

何と言ってもこの作品より、援助者の前に立ちはだかる強敵・「悪事銀行(バンク)」が登場します。悪事を担保にした銀行という名の通り、悪事を行うために武器や道具、手段を選ばない。代わりにそこでの貸しは別の機会に他の悪事に加担という形で返さなければならない、失敗すれば命で返すという究極の悪党組織です。この短編作品のラストで援助者と悪事銀行が初めて対峙し、これをきっかけに次の作品「TAKER」では悪事銀行が援助者を追いつめることになるのです。もちろん「GIVER」で描かれている、読者も騙される、残酷な「ノワールどっきり」も健在。とくに最初の話である「バベル」では復讐のために悪事を働く主人公が追いつめられ、逆に最後の「バビロン」は正義の味方を貫こうとする警備員が追いつめられるという、連続した物語となっています。きれいごとな正義を否定し、悪同士のせめぎあいというのもまた他の復讐代行漫画では見られないスタイルですね。

Contents

作中で登場する組織について

援助者(サポーター)義波などが所属する、復讐を代行する組織。テイカーの一存で依頼を受けるかどうか決められ、その後立案者のプランによって計画が進められる。復讐の中身は実際にターゲットの命を奪うものから、単純な伝言だったり自らが罰を受けたりするなど様々で、それにより金額も異なる模様。計画を秘密裏に実行するため、「痕跡は決して残さない、目撃者は消す」というのが鉄則となっている。

悪事銀行(バンク)文字通り悪事を通過にして取引を行う組織で、援助者ができる遥か前から裏社会に存在している。悪事を働くためにそれに必要な武器や手段を貸し付ける。しかし取引した者はその見返りに申し込んだ悪事を必ず成功させることや、他の悪事の手伝いを行わなければならない。悪事に失敗した場合は命をもって返済する。他には他人の戸籍・免許証・住民票などの融資も行っている。

登場人物・人物相関図

人物相関図

  • 援助者(サポーター)
    • 義波(ぎば) / 本名:尾崎冬矢(おざきとうや)

      本作の主人公。主に復讐プランを実行に移す中心的な役割を果たす。”義波”という偽名はGIVER(与える者)から。

      両親は裏稼業で殺し屋をしていた。しかし、ターゲットとしていた5歳の子供を殺害した報復として、別の殺し屋により事故に見せかけ殺害される。この時、同じ車に乗っていた冬矢と彼の姉・尾崎春香は難を逃れるが、春香は復讐のため単独で殺し屋のもとへ乗り込み、返り討ちに遭い殺害。そこに居合わせた冬矢が殺し屋をしとめ仇を討った。その後、春香が書き込んでいた「願い事を叶えるサイト」を運営するボスたちによって援助者のメンバーに入る。

      もともと感情が欠落している部分があって人の行動に理解が持てなかったり、逆に自分の感情の表現の仕方に問題がある。したがって殺しなど危険なことにも躊躇がない。両親が殺害されてからはその傾向がさらにひどくなった。その時から春香の真似をするようになり、振りから声まで完全にコピーしており、女性の声を自在に出すこともできる。また身体能力もかなり高い。春香の形見としてある変わった特徴を持ったナイフを携帯している。

    • 奪う者(テイカー)

      援助者を結成させた張本人でありボス的存在の病弱な少女。コードネームはTAKER(奪う者)

      資産家だった父親が13人の女に子供を産ませ、その中で自分の理想通りに育った子供に財産を与えるというゲームを行い、それに優勝した。しかし、直後に難病に侵されてしまい、長くは生きられない。せめて短い人生の間に復讐する側、される側の人間の愛や喜び、その裏側にある『心』を見たいという思いから「復讐代行」を行うようになる。”TAKER”というコードネームは義波が復讐代行によって手に入れた、ターゲットや依頼人の心(恨みや憎しみや愛情)をすべて自分のものにすることから。

    • 町田(まちだ)

      テイカーのいちばん上の兄。”町田”はコードネームマッチャー(調整係)からの偽名。父親の趣味からは最初に外れたが、事業を行うためのノウハウを取得している。世間を一番知っているということから、サイト運営、ターゲットの捜索、情報収集、ハッキングといったオールラウンドな仕事をする。テイカーのために復讐代行業を行っているが、本当は危険な目に遭わせないため反対の立場を取っている。

    • 安田(あんだ)

      テイカーのお手伝いを務める中年女。たまに復讐の実行役を担う。”安田”というのはあまり仕事がなく自分は”代役(アンダー)”だと自嘲気味に言ってることからの偽名。ひそかに朝美、和樹と連絡を取るようになる。

    • 立案者(プランナー)

      中学生。実際に復讐のプランを考えて実行に移す役割を果たす。あまり現場に出ることは無い。相手の心を読んで遠隔操作のように行動を操ることが得意で、援助者の活動において重要な役割を果たす。復讐のプランが実行されることを面白いと思っている一方、相手側の方に同情したり、また悪事銀行のリストに載っている個人物を助けようとするなど、メンバーの中では正義感のある性格の持ち主。

      “スクール・セイバー”として、学校裏サイトに書かれたいじめの主犯格のメンバー3人を自殺に追い込んだことがある。その後、彼が”スクール・セイバー”であることを知ったボス(テイカー)が義波を介してスカウトする。

    • 野上朝美(のがみあさみ)

      援助者スタッフの一人。かつて自らが被害に遭った結婚詐欺師を殺害したが、その男が援助者のターゲットになっていたことから逆に義波たちにマークされる。抵抗したものの義波にはかなわず、命を保証してもらう代わりに仲間に入ることになってしまう。主にターゲットの従妹など知人を演じることが多い。義理堅い性格でもある。

    • 小野田和樹(おのだかずき)

      援助者スタッフの一人。朝美とは同じアルバイト先の同僚で、結託して結婚詐欺師を殺害する。これより前に窃盗グループで車上荒らしをしていた時、その持ち主に見つかり、口封じのために持ち主を殺害していた。主犯格の男を含む仲間たちからの脅しを受けていたことや真っ先に自首したことで情状酌量が認められ、短い期間で釈放されている。この件を知った朝美が被害に遭った詐欺師への殺害を相談をするようになる。朝美とともに援助者の仲間に加わることに。純粋なところがあり、復讐計画においてそのことを立案者に利用されたこともある。

  • 悪事銀行(バンク)
    • 志尾(しお)

      悪事銀行の最高経営責任者。志尾はCEOから取った偽名。かつて世間的に悪と呼ばれていた存在に救われたことから、悪側の味方に付くことを考え悪事銀行を作った。「復讐には善の匂いがする」と語り、復讐代行業の援助者を快くは思っていない。やがて義波の引き抜きや他のメンバーのつぶしを企てるようになる。

    • 伊庭果菜子(いにわかなこ)

      志尾が義波のもとへ”プレゼント”した女性。義波の姉、尾崎春香の声や動きをそっくりコピーしている。生まれつき、存在ごと消えてしまいたいという願望に駆られており、志尾に出会ってから必要な人材として用意されてきた。

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