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日野草「TAKER 復讐の贈与者」を読む[相関図付き]~人間、愛情には勝てない。

TAKER 復讐の贈与者 (角川文庫) [日野草]

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どうもです。注目の本を1冊じっくりと解説していきたいと思います。今回は日野草氏著の「TAKER 復讐の贈与者」を取り上げます。

この7月からドラマ化されることが決定しているこの作品。シリーズものとなっていて「GIVER 復讐の贈与者」「BABEL 復讐の贈与者」「TAKER 復讐の贈与者」の三作から成り立っています。今回紹介する「TAKER」は最終章にあたります。

日野草「GIVER 復讐の贈与者」を読む[あらすじ・相関図付き]~復讐という名の残酷なドッキリ
GIVER 復讐の贈与者 (角川文庫) 価格:820円(2018/7/15 16:21時点) どうもです。注目の本を1冊じっくりと解説していきたいと思います。今回は日野草氏著の「GIVER 復讐の贈与者」を取り上げます。 この7月からドラマ...
日野草「BABEL 復讐の贈与者」あらすじと感想(人物相関図)。悪VS悪、悪事銀行との対峙
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前作で「悪事銀行(バンク)」と初めて対峙することになった援助者(サポーター)。この作品では悪事銀行が次々と援助者をピンチに追い込みます。裏切り、そして死…。一方の義波は姉の面影を残す伊庭果菜子に心を奪われてしまう。そんな中、そしてボス・テイカーの身にも危険が迫ります。

この小説では立案者(プランナー)の活躍が目立ちますね。命を懸けて悪事銀行と取引した人間を救おうとしたり、援助者の屋台骨になってるだけ存在感が増しています。そして何と言っても、義波に出会った時の発言「憎しみは晴らせば消えるが、心は空っぽになる」。そして、この作品の一番のテーマと言ってもいいでしょう、あの時の「人は愛には勝てない」という言葉が最重要になってくるのです。果たして義波はテイカーを救えるのか?そして義波もまた悪事銀行に寝返るのか?援助者はどうなるのか?義波の心の動きにぜひ注目してください。

Contents

作中で登場する組織について

援助者(サポーター)義波などが所属する、復讐を代行する組織。テイカーの一存で依頼を受けるかどうか決められ、その後立案者のプランによって計画が進められる。復讐の中身は実際にターゲットの命を奪うものから、単純な伝言だったり自らが罰を受けたりするなど様々で、それにより金額も異なる模様。計画を秘密裏に実行するため、「痕跡は決して残さない、目撃者は消す」というのが鉄則となっている。

悪事銀行(バンク)文字通り悪事を通過にして取引を行う組織で、援助者ができる遥か前から裏社会に存在している。悪事を働くためにそれに必要な武器や手段を貸し付ける。しかし取引した者はその見返りに申し込んだ悪事を必ず成功させることや、他の悪事の手伝いを行わなければならない。悪事に失敗した場合は命をもって返済する。他には他人の戸籍・免許証・住民票などの融資も行っている。

人物相関図

人物相関図

  • 援助者(サポーター)
    • 義波(ぎば) / 本名:尾崎冬矢(おざきとうや)

      本作の主人公。主に復讐プランを実行に移す中心的な役割を果たす。”義波”という偽名はGIVER(与える者)から。

      両親は裏稼業で殺し屋をしていた。しかし、ターゲットとしていた5歳の子供を殺害した報復として、別の殺し屋により事故に見せかけ殺害される。この時、同じ車に乗っていた冬矢と彼の姉・尾崎春香は難を逃れるが、春香は復讐のため単独で殺し屋のもとへ乗り込み、返り討ちに遭い殺害。そこに居合わせた冬矢が殺し屋をしとめ仇を討った。その後、春香が書き込んでいた「願い事を叶えるサイト」を運営するボスたちによって援助者のメンバーに入る。

      もともと感情が欠落している部分があって人の行動に理解が持てなかったり、逆に自分の感情の表現の仕方に問題がある。したがって殺しなど危険なことにも躊躇がない。両親が殺害されてからはその傾向がさらにひどくなった。その時から春香の真似をするようになり、振りから声まで完全にコピーしており、女性の声を自在に出すこともできる。また身体能力もかなり高い。春香の形見としてある変わった特徴を持ったナイフを携帯している。

    • 奪う者(テイカー)

      援助者を結成させた張本人でありボス的存在の病弱な少女。この作品では魔の手が忍び寄り、援助者にとって最大にピンチを迎える。

    • 町田(まちだ)

      テイカーのいちばん上の兄。今作ではテイカーの身に起きた事件をきっかけに義波と対立する。

    • 安田(あんだ)

      テイカーのお手伝いを務める中年女。たまに復讐の実行役を担う。”安田”というのはあまり仕事がなく自分は”代役(アンダー)”だと自嘲気味に言ってることからの偽名。ひそかに朝美、和樹と連絡を取るようになる。

    • 立案者(プランナー)

      中学生。実際に復讐のプランを考えて実行に移す役割を果たす。メンバーの中では正義感のある性格の持ち主だが、それ故に今作では命に係わる危険な状態に。

    • 小野田和樹(おのだかずき)

      援助者スタッフの一人。朝美とは同じアルバイト先の同僚。今作では志尾の使いと接近し、ある出来事をきっかけに朝美ともども援助者から抜け出す。

    • 野上朝美(のがみあさみ)

      援助者スタッフの一人。命を保証してもらう代わりに和樹とともに仲間に入ることになってしまう。

  • 悪事銀行(バンク)
    • 志尾(しお)

      悪事銀行の最高経営責任者。志尾はCEOから取った偽名。かつて世間的に悪と呼ばれていた存在に救われたことから、悪側の味方に付くことを考え悪事銀行を作った。「復讐には善の匂いがする」と語り、復讐代行業の援助者を快くは思っていない。この作品で義波の引き抜きや他のメンバーのつぶしを実行に移す。

    • 伊庭果菜子(いにわかなこ)

      志尾が義波のもとへ”プレゼント”した女性。義波の姉、尾崎春香の声や動きをそっくりコピーしている。生まれつき、存在ごと消えてしまいたいという願望に駆られており、志尾に出会ってから必要な人材として用意されてきた。今作で義波に接近し、行動を共にすることも。次第に義波を”尾崎冬矢”へと戻していく。

あらすじ・感想

キャッチャー・イン・ザ・ライ

3歳になる息子を連れて公園に遊びに来た男。妻にも恵まれ幸せな日々を過ごしていた。しかし息子が突然姿を消してしまう。心配した男の前に現れた義波は息子を捜そうとする男を車に入れ、誘拐しようとした。そこで切り出された「復讐代行業者」の話。男は隠していたある秘密を語り始める。

幸せな家庭を築いていた男。しかし25年前にある殺人を犯していたのです。結局捕まることなく今日まで過ごし、そして結婚・子供の誕生にも恵まれました。息子を助けるためには自らが犯人である証拠=被害者の遺体を見つけ出すこと。ところがその遺体が見つからないことから事態はさらなる展開を見せます。

事件以降、このことを隠し真っ当に生きてきた男ですが、妻に隠し通すことが出来るのか。物語のラストでは意外すぎる、どんな武器よりも怖い女の隠された狂気が描かれます。一見静かに見えてホント怖いラストです。

アフター・ライフ

殺人の罪で7年の懲役を送っていた男が出所した。彼を待っていたのは従妹とその彼氏。彼氏=義波が従妹と仲睦まじくしているのを見て、男はあることを打ち明けようとする。しかし、これが悲劇の始まりだった。

男と血縁関係のある”従妹”というのがこの物語の要となります。いわば禁断の関係ですね。男は殺人で懲役刑に服していたわけですが、その事件というのに従妹がかかわってくるわけです。変質的な醜い男の欲望というのが露わにされていきます。

フォーティー・フォー

小野田和樹はかつて塾の教え子を自殺に追い込んだラジオパーソナリティーへの復讐代行をすることになり機を窺がう。ところがそこへ別の女が迫ってくる。どうやらラジオパーソナリティーのことを知っているようだ。仕事の目撃者は消すという鉄則だが、和樹はそのことを無視して女を見逃そうとするが…。

復讐を実行する和樹が組織に盾突くも実は立案者の術中にはまっていたという話ですね。ただこの事件を機に和樹と朝美は得体の知れない援助者との決別をすることを決めます。

サクリファイス

義波に接触した依頼人の男とその娘が突如、義波を誘拐する。二人はかつて、悪事銀行に世話になったことがあり、その返済のために義波を襲うことになったのだ。しかし、志尾の指示通りの場所に行くと、そこにいたのは志尾ではなく、二人にとっては、忘れてはならない人物がいた。

悪事銀行と取引した二人が対峙する展開。悪事銀行を利用し、邪魔な存在だった女を始末した男だったが、その事件でもう一人犠牲になっている人間がいた。それを機に人生が壊れてしまった人物を前に男たちがどのような反応をするのか。

この計画を立てたのが悪事銀行…ではなく立案者。しかしこの後、彼もまた悪事銀行の魔の手にかかってしまうのです。

リベンジャー

大学生の男は付き合っていたモデルが不慮の事故で亡くなったことを知る。彼女はその日も現場でバッシングを受け、気が動転したことで転倒し亡くなったのだった。男に接近した復讐代行業者はテストを行って仲間に入れようとし、男はこれにこたえるかのように綿密な計画を立てる。そして、その時現場で傍観していた女を発見し誘拐。義波の前に差し出すのだが…。

復讐をしたくともその相手が分からない。すべては現実からの逃避に過ぎなかった。復讐ではなく、悲しむことしかできないという、復讐できない異例のケースとなります。この章で義波と伊庭果菜子が接触。そして事態は急展開し、怒涛の最終章へと向かいます。

テイカー

テイカーがさらわれる。取り乱した町田は安田を拘束し、義波を連れてテイカーがいる廃車工場へと急ぐ。そこには仲間ではなく、一人の妹を守りたいという一心だけしかなかった。二人はテイカーが閉じ込められた車を捜そうとし、義波が伊庭果菜子から受け取った「メッセージ」で捜すことに成功する。だがそれは義波が悪事銀行に寝返るきっかけに過ぎなかった。尾崎春香の亡霊にとりつかれる義波。妹のために義波と対峙する町田。二人の対決は最悪の事態へと発展していきます。なぜ志尾が悪事銀行を作り上げたのか。意外な義波との接点。「人は愛には勝てない」とはどういうことなのか。すべてに答えが出されるラスト。果たして援助者と悪事銀行の運命は?

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