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ストーリーを買うことって
小沢:”掘り出し物を見つけること”というプロフィールに書いてある趣味にびっくりしました。何ですか、掘り出し物って?
板東:古着だったりとか、古いものにすごく魅力を感じていて…。商店街の婦人服のお店とかもすごく
小沢:僕も大好きです。
板東:ホントですか?すごく好きで形とか柄とか気になっちゃうんですよねぇ。
小沢:何か、もう大多数のものがお金っていう無理やり計算された尺度で作られるようになってしまって、コストがいくらで、このくらいのパーセンテージでお金が返ってくるみたいなことを基本に作られちゃってる中で、まだひび割れてるというか隙間にあるのはやっぱり婦人服とかってそんなに計算が及んでない。まして古着はかなり計算が及んでなくって、お金の計算で発想していったら、ああいう風になってしまうのが及んでないですよね。
板東:そうですね。それを手に取る人の価値観で成立する感じが好きですね。
小沢:掘り出し物って言えば、アメリカだと”エステートセール”っていうのがあって。
板東:エステートセール。
小沢:エステートセールは怖いですよ。誰か亡くなるじゃないですか。その亡くなった人のものを亡くなった人の家で全部売るっていうやつで。
板東:すごい。
小沢:それだから、お金持ちのおばあさんとかが亡くなったところに行ってみるじゃないですか。ものすごい面白いもの売ってはいるけれど、さすがに手が出ないっていうか。
板東:実際に行かれたことも?
小沢:もう何度も。
板東:はがきみたいなものが届くんですか?
小沢:いや、”エステートセールは○○”って看板が出てるんですよ。「○日からここでエステートセール、あそこのばあさん亡くなったんだ」みたいになって、行くと、やっぱりお金持ちのとことかだとすっごいかっこいいシャネルだなんだあって、「オオー」ってなって。あとその人の歴史が見えますね。「この人ボリビア行ったんだ」とか。面白いですよ。すっごい面白いけど買うかどうかは結構…
板東:それを身にするっていうのは別ですよね。そうだと思います。私、よく祖母の服を着るんですけど…祖母はなくなっているんですが…それは祖母のストーリーを身にまとっているっていう自分が好きっていうか、その状態がすごく好きでそういうものをよく好んで古い服を着ちゃうんですけど。
小沢:ホントよく分かります。で、今”ストーリー”っておっしゃったじゃないですか?とにかくお金の計算で出来る、お金的に効率が合うものを大量に作って早く買って早く捨てるみたいながあるのは分かるんだけど、ストーリーないじゃないですか、全く。完全に。その中で「ストーリー欲しい」って思うわけで、今のさえかさんが言った感じはすごく正しいストーリーだけど、そのストーリーすら最近は商品になっていて、それが面白いのは”リクレイムドウッズ”っていう、古い家屋から回収してきた”木”を使うブームっていうのがかなりニューヨークではあって、木のドアとかをわざと古い家屋から持ってきましたみたいな。そこにくっついているストーリーがやたら大事なんですよね。「これはメイン州の海辺にあった納屋のやつを持ってきて」とかストーリーを買ってるんですよね。面白いなあと思う反面、「それは本当のストーリーなのかなあ」みたいなことは思うんですよ。ただ、これだけ意味のない、大量にものが速く流れるみたいなのがあると、絶対人間ストーリー欲しがるのでそういうものも増えてきて、それが商品になって結構高い値段で売られるみたいなこともあるんだろうなあって、ニューヨークの内装の傾向を見ていると思います。
板東:日本にも渡って来そうですね…。
小沢:渡って来そうでしょ?「これは○○島の○○を持ってきておりました」っていうのが、それがその人のおじいさんのとこへ行くんだったら分かるんですけど、切り取られた形で…そこだけを切って…ただメイン州の方は古い納屋がすごい値段がついちゃってて。そうなるともう、お金でストーリーを買ってくるっていう。
板東:そのうち、空気を買うみたいなことにまでなりそう。
小沢:そうそうそう。それが今もうなっているっていう。
板東:空気を含むものですもんね。それは本来のピュアな意味をはき違えて伝わっているっていうことがものすごくあると感じていて、例えばSNSも私もよく利用しているツールではあるんですが、インスタグラムとかももともとは素晴らしい景色を誰かに伝えたいって思った人が写真を撮ってそれをポストして。で今度はその写真を撮りに行くのがステイタスっていう風潮にどんどん。すごいなあと思うんですけど、すべてがそうなっちゃうとさみしいなあって思うことがよくあります。
小沢:そうですね。でもなんだかんだ言って、本当のことって叩き潰せない気がして、”リクレイムドウッズ”にしても、ストーリーを売るみたいなのもニューヨークに住んでいると見えてきて、「またやってるのか、ストーリー商売」みたいなことを思ったりするわけで。結構イタチごっこちゃあイタチごっこなんだけど、イタチごっこになるだけいいですよね。まだ。モグラたたきになるから。モグラたたかれないってことはなくて、気がついたらみんなたたくわけで。でその”リクレイムドウッズ”になった前の状態、そしてなんでそうなったかっていうと、大きい木を伐るのってめちゃくちゃひどいことじゃないですか。育つまで100年かかる木を伐ってきてドアにするとか。「それひどいよ」ってことになって古い木を使う、最初は健全なことだったんですよ。「だったらあそこのドア取ってきちゃえばいいじゃん」。最初はすごい健全なやつだったのが、どんどんそれがスタイルになって。さっきおっしゃったことと一緒で。だけどそれに人は気が付くし、「違う。ちょっと噓くさいよ」って。噓くさいって気が付く能力が素晴らしいと思うんですよね。それは何かみんな持ってて。みんなは持ってないかもしれないけど。結構な人が持ってる。そういう人たちは僕は何か似てるなあと思います。
選択する必要なんてない
板東:今私、番組では同世代の女性に向けて発信をしているんですけど、日々自分が身を置いている大阪だったら、大阪でみんなは何をしたくて何に興味があって、てことをいつも探っている、リサーチしているんですけど。みんな興味を持つものを欲しがっているんじゃないかなと私は思っています。
小沢:興味を持つもの?
板東:はい、自分が気になるものを探している。
小沢:自分がホントに気になるものね?
板東:そうです。流行じゃなくてです。
小沢:それが持ちにくいってこと?
板東:…例えば何かになりたいっていう夢があるとしたら、それを持ちたい。もちろん持たないといけないわけじゃないんだけど、持っている方がいいのかな?ということがある気がしていて…でも私がいつも何かを選択する時は”した方がいい”じゃなくて”したい”ことを選ぶように自分はしているんですけど、そういう風に生活していたら自然と好きなもの、夢って見つけられるんじゃないかなと。その夢を探したい人に対してはそういう風に私は思っているんですけど。
小沢:選択…選択肢がさ、よく言うんですけどアメリカの政党って共和党と民主党というのがあって、その選択をするんですけど、それってペプシとコーラを選ぶみたいなもので、”違うんだけどだいたい同じ”みたいなやつで。だから選択肢っていうのは人が選択するてことは選択肢が用意してあるじゃないですか。で結構よーく見るとどれも一緒みたいな。どれ選んでも同じことをすることになってるみたいなのがあって、用意された選択肢だなと思ったら、一瞬”選択しない”っいう方がいいような気がするんですよね。自分はこれ派とかって行かない、派とかなんだったら行かない気持ちですね。「もういいよ、選択肢取らない」っていう。僕はそういう感じじゃないかな。だって選択肢がもう用意してあんですもん。
板東:そうですね。そうですね。
小沢:だから選択しない。選択肢の方から「お願いだから取って」って頼まれるまでもう選ばない。向こうから来るまで待つ。何かホントいっぱい選択肢が用意されてて、でもよーく見るとどれもペプシとコーラとファンタで全部一緒で水はないみたいなって感じで。「どうせ人は選択するんでしょ?このくらいの選択肢でどうですか?」って出されてる感じで。それでぶち壊したいんですよね。奇麗に並べられてて「え?こんな中に答えない、ガッシャーン」っていう気持ちがちょっとあって。大人げないですが。○○系とかも。例えば渋谷系とか呼ばれますけど…何かそんなものあるのかなあっていう感じ。それと○○系ということでその人本人が見えなくなっちゃうんだけど。平気で「あの人○○系」って言うじゃないですか。結構めちゃめちゃ失礼ですよって思うんですよね何か。
板東:そうですね。くくりたがる
小沢:選択肢に自分からまとめていっちゃう。それなくていい、選択しなくていいかなあとか思ってます。
MUSIC:小沢健二とSEKAI NO OWARI「フクロウの声が聞こえる」
- フクロウの声が聞こえる
小沢健二とSEKAI NO OWARI
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