小沢健二がFM802「BEAT EXPO」生出演!2/9配信開始の新曲「アルペジオ」を語る。
ゲスト:小沢健二
ゲスト:土井コマキ
- アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)
小沢健二
J-Pop
大阪の話をしてください。
小沢:こんばんは、小沢健二です。今、生放送で出ています。最初、何か朗読をしてみます。題して「大阪の話をしてください。」という話です。
僕のような、東京のにおいのする人が大阪に来る。すると彼はやたらと大阪の話をする。「僕と大阪のかかわりは意外に深くて」とか。そして大阪人のあなたにやたらと大阪の話をしてもらいたがる。そういうヤバイ東京人は「あなた大阪人なんだから大阪の話してよ」みたいな態度でとにかく話を大阪の方向にもっていく。そして、優しい大阪人であるあなたは、東京人に合わせて「そうですよねー、大阪では」とかたくさんの大阪の話をしてくれる。本当はあなたには、大阪の話なんかじゃなくてもいっぱい他の話があるんだけど。
更にヤバイ東京人の場合、もしもあなたが最近行った九州の話なんか始めたら「おい、なんで九州の話なんかしてんだよ、大阪の話しろよ」くらいの顔つきになる。「大阪人は大阪の話だけしててよ」みたいな態度で。本当はあなたは普通に前にハワイに行った時の話とかヨーロッパのサッカーの話とかしたい。でも、心優しいあなたはいつも大阪の話をしてくださる。「この話もう飽きてるんだけどなあ」と思いながらも。
さて、その大阪人のあなたが東京に行く。「東京ってこうだなあ」と自分の東京論を持つ。その東京論をヤバイ東京人に話すと「あ、それ大阪ってこうだからでしょ?」となぜかまた大阪の話になるでしょう。「大阪ってそうだからねえ、だから東京もそう感じるんだよね。」などと大阪を決めつけられてしまう。ちょっと待て。俺はただただ東京の話をしたいんだ。何でいつも大阪の話に帰ってくるんだよ。とあなたは正直思うが、心優しいあなたはやっぱり、せっかく東京にいるのに大阪の話をしてくれる。
「大阪人は必ず大阪の話をしてください。」みたいな暗黙のプレッシャー。これは、実は日本人がアメリカにいる時のプレッシャーとそっくりである。アメリカ人って言ってもいろいろいるけど、この場合俳優のマットデイモンみたいな人を想像してほしい。彼らは相手が日本人とみるとやたらと寿司の話をしたがる。日本について持ってる浅はかな知識をジャンジャン並べてくる。そして、「僕の友人の彼女のルームメイトが日本人で、だから僕は日本の文化を知っているんだあ」みたいな。それ全然遠いぞというところから、自分の日本論をぶちまける。そして日本人であるあなたにもとにかく日本の話をさせたがる。そして、心優しい日本人のあなたは、おかしくもないのにクスクス笑いながら、「そうですねえ、武士道の影響かもしれませんねえ」などと話を合わせる。
もちろんあなたは「武士道ってなんのこっちゃ」と思うし、芸者とか全く知らないし、そもそも日本の話なんかじゃなくて去年アフリカに行った時の話とかをしたい。でも、そのメインストリームのアメリカ人は「日本人がアフリカの話をするのなんて時間の無駄だと思う。日本人は、俺が知ってる感じの日本の話をしてください。」みたいな態度を取る。実は、まずいことにその日本人の方にも用意ができていて、日本人同士では武士道の話も芸者の話も全くしないのに、ヤバイアメリカ人と話す時になるとつい、「そうですねえ、芸者が…」とか「武士道が…」と調子を合わせる癖がついていたりする。
さて、そのマットデイモンみたいなアメリカ人は、「あなたには日本のことだけをしゃべってほしい」一方で自分自身はすべてのことについて持論をぶちまける。「アフリカってこうだよねえ」「日本てこうだよねえ」「インドってこんなでさあ」と世界中のことに意見がある。そして、アメリカ自体のことは「あ、アメリカ?別に普通。あなたも知ってるでしょ?」みたいな感じ。これはちょうどヤバイ東京人が「あ、東京?あなたもテレビとかで見ているでしょ?知ってるでしょ?普通でしょ?それより大阪の話をしてよ」というのに似ている。
僕は時々メインストリームのアメリカ人と話している時、ワザと日本の話をしないようにする。すると、メインストリームのアメリカ人は落ち着かなくなる。彼はどうしても僕に日本の話をしてほしいのだ。アメリカについて僕がどんなによく勉強して知っていても、日本人の僕には日本のことしか話す資格がないと思っているのだ。だからこそ、いたずらでワザと全然日本の話をしないことがある。そういうことって、ありますか?
もちろん、ご安心ください。心あるアメリカ人たちの間ではマットデイモン的な「自分は何の話でもする資格があるが、あなたには限られた話をする資格しかない」みたいな態度は最悪なものとして知られている。特に最近、マットデイモン的なノリは”ヤバイ”と語られている。だって、あなたには大阪の話しか、あるいは日本の話しかする資格がない、なんてそんなわけないじゃん。おしまい。
土井:はい、もうすいません。のっけから私、声を殺してずっと笑ってしまって…
小沢:どうなんですか?何か大阪人は大阪のノリ出してみたいに思われてるプレッシャー感じます?
土井:うーん、も、あるんですけど、私すごいね、関西弁が抜けないんですよ。
小沢:あー。
土井:スペースシャワーTVで番組をやらせてもらったことがあるんですけど、ものすごい関西弁で六本木でまくし立てるっていう…
小沢:あー。
土井:とかあって、逆に求められているのかもってどこかで思ってたかもしれない。
小沢:なーるほど。だから日本人って、ニューヨークに行くとキャラが立ってるていうか興味を持たれるアレだから、そうすると何かとにかく日本の話に振ってきて、いやあ全然乗ってけないなと思ってたまに全然完全に日本の話しなかったりします。
土井:小沢さんまだそういう感じで、日本の話をしてくれみたいな感じで
小沢:あ、誰でもそうですよ。例えばよく言われるけど黒人のアフリカ系アメリカ人の小説家とかだとすぐにアフリカ系アメリカ人ぽいラップが出てくる話とか、そういう話を書いてくれみたいなプレッシャーを感じてすごく嫌だったり。普通に自分が思っていること書きたいのに、何かラップミュージックがかかってるみたいなことを期待されてるっていう話がありますね。それから、ヒスパニックのメキシコとかだと、メキシコっぽい話書いてくれよみたいなプレッシャーを小説家ですら感じる。そんなことを大阪に来る車中に思いながらこれを書きました。そして2/14が”アルペジオ~きっと魔法のトンネルの先”という、映画「リバーズエッジ」の主題歌の発売日なんですけど、ですが、実はこのあとこの夜中、真夜中(2/9)くらいから突然、配信になります。
土井:わあー。すごいニュースが。
小沢:あと何時間後に突然、配信が始まります。”アルペジオ”の。そしてその前に普通はラジオでかかったりするんですけども、何か僕は自分でマスタリングした配信の音で届けないと、やっぱり合わない気がして、それで今アップルと…アップルミュージックと番組を作っていて、その流れで…はい、12時から。真夜中ぐらいからだと思います。
土井:それを告知してしまって大丈夫だったんですか?
小沢:全然わかりません。でももう言わざるを得ないでしょ。ホントはここでぜひ”アルペジオ”をかけたいんですけど
土井:みんな聴きたいと思っているかもしれない。
小沢:かけたいんですけどかけられないのはこの後、いい音で聴いてください。なんか二百何十円かなんでぜひ聴いてください。
土井:楽しみですね。でも何時間か、たぶんみんなむちゃくちゃすごい妄想が走り出して止まらなくなって、楽しみな時間過ごすと思うんで。
小沢:映画「リバーズエッジ」はご覧になりましたか?
土井:まだです。
小沢:すごい面白い、すごい映画です。それの主題歌です。
土井:いやもうホントにどっちも楽しみで、なので、どちらかというと劇場で初めて聴くっていうのを体験したいっていう人も
小沢:それはもう絶対あると思います。吉沢亮君のすごい素敵な横顔に合わせてイントロがかかります。イントロは音が一つだけです。一つだけの音から広がります。
土井:アルペジオ…なんですね?ちょっとドキドキしてきましたけど、大阪って話なんですけど、今日大阪の印象とかいろいろ聞かれました?
小沢:今日それでいろんな話になったんですけど、全く普通の話をしてそれでもやっぱりすごく大阪っていう古くて偉大な都市からの視点をすごく感じました。それは変に大阪っぽい話をしなかったからむしろ感じて、やっぱりどんどん諮詢になってることに関して、すごく違和感をはっきり言うなと思いました。
で今すごくたくさん話をさせていただいたんですけど、やっぱりむしろ大阪の話をしない方が、ずっとこの土地の視点を感じるなあと思いましたよ。そんなのが802でたくさん流れます。
MUSIC:「ある光」小沢健二
- ある光 (JFK 8’16” Full Length)
小沢健二
J-Pop