「アルペジオ」ジャケットへのこだわり
小沢:今、板東さんに見ていただいたんですが、ジャケットを作っていて
板東:飛び出す絵本みたいですね、これ。すごい。
小沢:東京の街角にある架空の生活のセットを置いて、東京の路地に置いてそれをシャボン玉を飛ばして撮影しているんです。
板東:え?これそのものがそこにあるんですか?
小沢:そうです。全くCGとか何もなくて、生で全部置いて、右の方にタイトルがあるんですけど、タイトルもアクリル板に刷って紐に吊っていて
板東:ホントだ。
そしてしかも、ユニバーサルミュージックのロゴも価格も品番も全部アクリルで実際に作って紐でぶら下げているという。
板東:すごい、すごい凝ってるぅ。
小沢:何かめちゃくちゃなやつなんですけど、僕は自分でデザインするんですが、前に2つ出したシングルで「流動体について」と「フクロウの声が聞こえる」という曲があって、それをデザインしてて思ったんですけどすごく奇麗に出来たとは思うんですが、「今はもっと壊れてないとダメだな」と思っていて、前の2つは奇麗に出来たんですけど、去年…2017年に日本で結構長い時間を過ごした…20年間で初めて長い時間を過ごしました。その中で”どうもみんなまとまり過ぎてる”みたいな気持ちがあって、何かこんなのも全部ぶっ壊していいのに、「形とか何かの再生産じゃなくていいのに」みたいなことを思って。それでもう全然ワケ分かんない形のジャケットが思い浮かんできて。どうですか、大阪芸術大学芸術学部卒の板東さん。
板東:すごく、手に取るのが楽しい作品だなとまず印象で思ったのと、これ、開けてみて最初、ただのCD盤だと思ったんですけど、このデザインからするとシャボン玉の一部にも見えてきて、すごく見れば見るほど面白いなと思って。
小沢:そうなんです。だから、めったくそに壊れていることと、あと日本なので印刷技術が高いことと紙の質が高いことと折り目とかが正確なこと。
板東:へえ。ここの切れ目は何なんですか?。
小沢:そこの切れ目はパッと浮かんだんですけど、やっぱり都市の生活、都市の風景を映しているので、どっかから全然別の世界に逃げられるといいなと思っていて。何かそれで頭の中にパーッと浮かんで、今回はセットデザイナーの中村桃子さんというセットを作ったセットデザイナーと一緒に作業していたんですけど、「ここにね、何か穴が開いてるんですよ」って言ったらすっごいにっこり笑って。僕が思いついて「ここにバコーンと切れ目が入ってるの作ったら」って言ったらすっごいにっこりして気持ちが分かったみたいで。すごく楽しく…セットデザイナーとデザインをするのってあんまりないと思うんですけどすごく面白い体験でした。セットデザイナーって生活の場を作っているわけで、ある架空のあるかもしれない、あったかもしれない生活みたいなのをセットにしていって、それが東京の都市の中にあるんだけど何かとらえどころがないっていうのを合成とかフォントとかなしでやりたかったんですよ。これ、そういうのに興味があるお若い方も多いと思うんだけど、フォントを置いているとあまりに全部がコントロールできるんですよね。もうミリ単位でこっちに動かしてみたいな。でも世の中ってそんなにコントロールできることばかりじゃないので、「こんなに全部コントロールできたら気持ち悪いな」と思って。で、生の現場にある1回だけのことを写したいと思い始めて。それでアクリル板も風でぶらぶらゆれてるんで向きが変だったりするんですけど、1回でその上にイラストレーター通すことなくできるものがいいなと思って。だからその面には1個もイラストレーターが通ったものありません。
板東:形もいびつですね。
小沢:そうなんです。何度か模様のモチーフを繰り返して使っているんですけど。そして裏は満島ひかりさんと一緒にライブで、東京湾の船の上で録音した「ラブリー」という90年代の僕が書いた曲が入っているんですが、それの時の感じで東京の夜景なのですが、「ラブリー」というわりかしよく知られている曲の歌詞が透明で印刷されているという。
板東:…全然文字探さないと見えないという
小沢:光を当てないと全く見えない
板東:少しワンワードワンワードが色ついているんですけど、ほとんどが透明ですね。
小沢:それで一生懸命みるとキラキラ書いてあるんですけど、それは船の上で、夜中の東京湾の上で満島さんと船に乗って「ラブリー」を歌ったんですけど、その時の感じっていうのがまさにそういう感じで、でこれも裏のことを考えてデザインを考えていた時に、僕は今ニスで印刷するのをすごく凝っていて、それニスなんですよ。
板東:このインクの文字の部分が。
小沢:それは前回2作でもニスで印刷しているんですけど、今回は文字もニスで印刷してしまおうと思って、それで歌詞、しかも割と知られている曲で歌詞がいろんなところに散らばっていて、全く僕が知らないところで歌ったりしているわけで、何かそう思ったら透明な歌詞を刷るのが正しいよう気がしてきて。それでも僕らが船の上で歌った時の感じもあって、それはその時満島さんが着ていた服の感じもあって。そんなデザインになっています。
板東:素敵ですねえ。
MUSIC:小沢健二と満島ひかり「ラブリー」
- ラブリー、東京湾上屋形船Liveは雨
小沢健二と満島ひかり
J-Pop
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