今回は日本のプロ野球公式戦、ラジオ実況中継のスポンサーを調査します。
先日はニッポン放送で中継されたメジャーリーグの2024年開幕戦、ドジャースVSパドレスのスポンサー結果を紹介しましたが、いよいよ日本のプロ野球も開幕しました。地元球団のあるラジオ局を中心に野球中継を中心とした編成に切り替わり、ワイド番組でもひいきのチームの結果に一喜一憂するシーズンとなってまいりました。
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はじめに…中継は縮小されてきている
昨今のラジオを取り巻く環境の変化により、野球中継の縮小は相次いでいます。2023年シーズンからはKBCラジオが土日のホークス戦ビジター中継を見送ることに。更にそれ以前に野球中継を取りやめたTBSラジオも裏送り用の代理制作中継を取りやめました。いずれも人件費や中継委託のための予算が高騰し、継続できなくなったためだということです。CBCラジオでは横浜スタジアムで行われている対DeNA戦(中日のビジターゲーム)を中継映像を見ながら実況するオフチューブ形式で放送しますが、TBSラジオが制作から手を引いた影響もあるわけですね。
一方で野球中継のニーズは高い
こちらは2023年ラジコで聴かれた在京在阪中部エリアのラジオ番組のTOP10です。これを見ると在京エリアではニッポン放送「ショウアップナイター」が1位、在阪エリアではABCラジオ「ABCフレッシュアップベースボール」が1位でMBSラジオ「MBSベースボールパーク」が3位、在名エリアでも東海ラジオ「ガッツナイター」が2位でCBCラジオ「CBCドラゴンズナイター」が5位、と野球中継の人気が依然としてあることがうかがえます。全放送回の延べ聴取者数なので帯番組や週5回以上放送される野球中継に有利な条件とは言え、この中に入っていない帯番組も多いことを考えれば、やはり関心が高いと言えます。在名エリアでは近年不振が続き、リブランディングを繰り返すTOKAI RADIOの数少ないストロングポイントでもある「ガッツナイター」が、CBCラジオの朝の盤石なワイドである「つボイノリオ」や「朝PON」を差し置いての2位。しかも2023年の中日は序盤から低迷が続き、10敗カルテットだ米騒動だと暗い話題ばかりだったにもかかわらずのこの結果。コストがかかるとはいえ、やめられないわけですよね。
野球中継のスポンサーのつけ方
話はそれましたが、ここからスポンサーの話題に入っていきます。野球中継のスポンサーの付け方として特定の曜日の中継に20秒CMを5本入れる、もしくは10本入れるというパターンがあります。
こちらはニッポン放送「ショウアップナイター」のセールス募集要項です。週1曜日に6社が共同提供、1社あたり20秒CMを10本オンエアするという概要になっています。
RCCラジオ「VERYカープ RCCカープナイター」のセールス募集要項です。こちらでは週1曜日に100秒、20秒CMを5本オンエア、月額100万円という概要になっています。
RKBラジオ「エキサイトホークス」のセールス募集要項。”1/6″とか”1/12″という数字が出てきます。CMは試合前もしくは試合後のいずれか、各回の攻撃終了時のインターバルに流れる旨が記載されています。各回の攻撃終了時のインターバルでは基本1分のCM枠が設けられていて20秒CMを3回流します。またRCCラジオやABCラジオ、MBSラジオ、東海ラジオ、CBCラジオ、HBCラジオ、STVラジオなどは試合前のCMと試合後のCMにそれぞれ2分の枠が設けられており、これも合わせるとCMの流れる時間は1試合の中継に付き、だいたい20分(1200秒)以上となります。つまり1社あたり200秒CMを流すとすれば最大6社の共同提供(1200/200)、100秒CMを流すとすれば最大12社の共同提供(1200/100)となるわけです。放送料金は各局によってまちまちですが、CMの流し方としてはこれで共通しています。つまり、ニッポン放送にとっては6社埋まっているかどうか、ほかの局では12社埋まっているかどうかがスポンサー調査する上でのポイントとなっています。
スポンサー調査
ニッポン放送「ショウアップナイター」
火曜から金曜は上述の通り6社が共同提供、20秒CMを10回以上オンエアしています。土曜は4月6日の放送では6社が提供アナウンスありで20秒CMを5回以上オンエア、スカパー プロ野球セットとPT枠のイエローハット、ベリーベスト法律事務所が20秒CMを10回以上流していました。このPT枠は週によっては番宣やFM93を周知させるCMが流れており、スポンサーのついてないスポット枠のようですね。また、日曜日のナイターは全編提供無しのスポットCMのみとなっていました。そもそも週末はナイター自体が不定期になっていますからね。(商業的にもデーゲームになることが多い)
HBCラジオ「HBCファイターズナイター」
北海道日本ハムファイターズの試合を完全中継している「HBCファイターズナイター」。昨年7月の聴取率調査でHBCがNo.1となったわけですが、その要因として「ファイターズナイター」がけん引した部分が大きいですね。なんせ「いんでしょ大作戦」や「サンデーソングブック」と互角以上に渡り合えるわけですから。
上の図は曜日別のスポンサーとなっています。あんしん財団とJA共済の色が変わっていますが、これはニッポン放送「ショウアップナイター」と共通のスポンサーです。このようにHBCに限らず、ローカルのプロ野球中継ではキー局のものをネットしたり自社制作で中継したりするものにかかわらず、ニッポン放送のスポンサーの一部が付くことが多くなっています。
それ以外のスポンサーでは地元企業が中心となっており、車両関係(ネッツトヨタ道都、札幌パーツ、石上車輌など)や食品関係(鱗幸食品、HORI、紅一点、北日本フードなど)が多いですね。
1曜日当たりの平均スポンサー数は6~7社。番宣やファイターズ応援ツアーの宣伝、HBC後援のイベントのスポットが目立ちました。
STVラジオ「STVファイターズLIVE」
こちらもファイターズの試合を中心に試合終了まで中継するSTVラジオの野球中継「STVファイターズLIVE」。HBCと異なり、こちらは月曜と土日の中継がありません。月曜および土曜は人気ワイド番組が堅調なため、日曜は競馬中継を優先するためこのような措置をとるようになっています。
HBC以上にニッポン放送と共通のスポンサー(イエローハット、SANYO、三菱ふそう、鹿島、NTT東日本、出光興産、大東建託グループなど)をつけているため、1曜日当たりのスポンサー数は約9社と多くなっています。番宣などのスポットもHBCよりは少なめ。
それ以外では中古車買い取りのエゾイズム、地元のメガネ専門店・メガネのプリンスとメガネサロンルック、北海道の金融機関ながら名前がハングルになっているウリ信用組合から真駒内滝野霊園、知的障害者授産施設のあすなろパン、連合北海道にペットの里親を探す「全国犬猫飼い主を探す会」、と野球中継のスポンサーとしてはかなり振り幅が大きく、バラエティに富んでいると言えます。読売新聞と朝日新聞が違う曜日で提供しているというのがまたなかなか…
東海ラジオ「ガッツナイター」
来年で50周年を迎える「ガッツナイター」。ドラゴンズ中継の代名詞的存在として、近年不振気味の東海ラジオの中でも気を吐いています。最近は東海ラジオの実況アナウンサーが減ったり、異動になったりでやりくりが大変そうですが、東海テレビのアナウンサーも駆使して頑張り続けています。
スポンサーも全曜日12社近くまで埋まっており人気の高さがうかがえます。コテコテの地元企業中心となっており、明宝ハム、ヤマトライス(名古屋にある大和産業の自社ブランド)、宮﨑本店などの食料品やお酒関係、いけす鶴八などの料理店、名前通りガッツ石松さんがCMに出演しているガッツレンタカー、解説者の山崎武司さんが出演する”中国菜館桃の花”のCMを流しているマツバラグループは鋳物専業メーカーのマツバラが中心となっている会社、これまた山崎武司さんがCM出演している腕時計、バッグ、ジュエリーのブランド品を販売する中区のアッパータイム、ドラゴンズとコラボした”ドラ勝つめい茶”で知られる活命茶の中北薬品、ユンボなどの中古建設機械を販売・買取するトクワールド、金やプラチナ高価買取の堀田商事、ドラゴンズ選手の棒読みCMが恒例となっているアーレックス、家関係でいえば賃貸物件の本州建設にリフォームのライクスホームに外壁塗装のジャパンホームワンド、野球中継の合間に聞くにはさみしくなってしまう葬祭関係ではセレモニーホールの愛昇殿、福祉葬祭三重にセレモが名を連ね、一方温泉やリゾート関係では奥飛騨温泉ひらゆの森やメナード青山リゾート。などなどこちらもかなり振り幅がすごいことになっています。
CBCラジオ「CBCドラゴンズナイター」
こちらも在名エリアでは人気の高いCBCラジオ「CBCドラゴンズナイター」。大人の事情で神宮球場のヤクルト戦は中継できないものの、逆に「ガッツナイター」で中継できないカード(週末に開催される東京ドームでの巨人主催試合の一部)はこちらが独占状態となっています。
東海ラジオとかぶっているスポンサー以外では、不動産関係のスポンサーが比較的多め(永賢組、あま市のあま土地)、旅館関係多め(喜多の湯、水明館)、パチンコ関係多め(オーギヤグループ、有楽グループ)、そのほかJP STARで知られるキャンピングカー販売・修理メーカーのムーンスターエクスポート、車検のユニーオイル、NPO法人ひだまりの和、ひまわりケアサービス、からふるグループと「ガッツナイター」に負けず劣らずのシニア向けのスポンサーとなっています。
1曜日当たりの平均スポンサー数は7社以上。ただ番宣や営業関係(“CM募集”的なニュアンスの広告)のスポットが若干多めな印象を受けました。ちなみにスポンサー読み上げは番組のオープニングとエンディングで分けていて、上述の写真で取り上げると、4月2日はオープニングで「本州建設、ひだまりの和、株式会社GRANT、そのほかの提供でお送りします。」、エンディングで「貝沼建設、テクノ菱和、NTP名古屋トヨペット、MIRARTHホールディングス、そのほかの提供でお送りしました。」と紹介しています。
ABCラジオ「ABCフレッシュアップベースボール」
在阪エリアNo.1となったABCラジオ「ABCフレッシュアップベースボール」。阪神タイガースの試合を完全中継する看板番組となっています。交流戦では北海道や東北まで乗り込んでの迫力ある実況を展開。スペシャルウィークではタイガースの得点×1万円をプレゼントなども行っています。勝った翌日は六甲おろしを大合唱する番組もABCにはありますよね。
こちらも看板番組ということで12社ほぼ埋まっています。パチンコ関係が割と多めで、ニッポン放送と共通のSANYOとSammyのパチスロメーカーのほか、パチンコ123の延田グループ、パチンコ&スロット キコーナ、スーパーコスモグループとパチンコチェーンも3つ。更に尼崎信用金庫、北おおさか信用金庫、大阪厚生信用金庫、播州信用金庫と4つの信用金庫が各々曜日にスポンサードされています。あとはソンバーユの薬師堂、温泉施設の水春、脚立メーカーの長谷川工業、神戸に本拠地を持つ日本酒メーカー、清酒櫻正宗と菊正宗、イカ天大王のマルエスなどなどローカルな企業がぎっしりついてますね。
そんな中、水曜日と金曜日に提供している”阪神タイガース実況CDマガジン“とは何ぞや、というと、4月にアシェット・コレクションズ・ジャパンから出版されたCD付きのマガジンで、CDには阪神タイガースの名勝負を実況したABCラジオの音源を収録。試合の振り返りや独占インタビュー、試合の舞台裏を追跡したドキュメンタリーなど阪神ファンには見ごたえある構成になっているようですね。
MBSラジオ「MBSベースボールパーク」
ABCラジオの中継と双璧をなすのがMBSラジオ「MBSベースボールパーク」。阪神戦やオリックス戦のもう一つのキー局となるラジオ局です。ただし日曜日は競馬中継を優先するため、デーゲームの放送はありません。ちなみにナイトゲームの放送枠は日曜にもレギュラー番組として確保されていて、4月時点では「MBSベースボールパーク番外編」としてオンエア中。夏以降にナイトゲームが行われる際にこの時間で完全中継されます。
こちらもほぼ12社埋まっています。土曜日は若干番宣などが多めですかね。スポンサー読みはCBCラジオ同様、番組オープニングで最大6社、エンディングで残りの最大6社を紹介するスタイルをとっています。
さきほどのABCラジオではパチンコ関係が多いと書きましたが、こちらも負けてはいません。延田グループ、キコーナ、スーパーコスモグループに加え、パチンコ&スロット アミューズにスーパードーム大和高田店とパチンコチェーン5社そろい踏み。しかも金曜以外で2社かち合うということになっています。更に金曜には大遊協というパチンコパチスロの組合そのものが提供しているという。面白いですね。
そのほかホテルニューアワジに紅梅亭に花山温泉 薬師の湯と旅館や温泉といったスポンサーも多いですね。豆腐の藤田食品はABCラジオの中継でもスポンサーになっていますが、MBSではCMソングを原田伸郎さんが歌っているものが放送されています。
ちなみに今シーズンから新たに外為どっとコムがスポンサーに加わっています。詳細はこちらのリンクからどうぞ。
RCCラジオ「Veryカープ RCCカープナイター」
広島カープの公式戦全試合完全中継を行うのがRCCラジオ。全世代に圧倒的な支持を得ているというのが先述のセールス募集要項にも書かれています。現役のRCCアナウンサーの小説で53歳のアナウンサーがプロ野球・広島カープの選手を目指すという作品がありますが、あの中に出てくるいかにもRCCラジオがモデルであろうラジオ局でも、カープの試合を全試合中継していて、その成績がスポンサーなど局の景気を左右すると書かれていました。カープの動向はスポンサー確保の面からもRCCラジオにとってまさに重要なんですね。
火曜から金曜のナイター枠については12社ぎっしり埋まっています。屋根や外壁、内装工事を行う島屋グループ、広島を中心とした薬局を運営するライフアート(ごぜん様さまの「すこやか様さま」のスポンサー)、蒲刈物産が販売する海人の藻塩(あまびとのもしお)、宮島名物・桐葉菓のやまだ屋、安芸れもんなどのお菓子処・平安堂梅坪などなど。一方で土曜と日曜のデーゲームは冠スポンサーをつけたり、CM数を20秒×10本にしたりと平日とは異なるスタイルをとっているようで番宣などのスポットも目立っています。
と、ここまではエリアでの人気も高く、スポンサーもついている番組でしたが、その一方でスポンサーの少ない地域があるのもまた事実です。
KBCラジオ「KBCホークスナイター」
福岡ソフトバンクホークスの試合を完全中継するKBCラジオは前述したように2023年度より経費不足のため週末のビジターゲーム中継を取りやめることになりました。スポンサー数もニッポン放送共通の企業が多く入った火曜と金曜はそこそこ埋まっているものの、水曜と木曜は2社とかなり少なめ。しかも全曜日でのスポンサー、やまやコミュニケーションズは1曜日あたり20秒×5回のCMオンエアではなく、1日あたり20秒×1×4曜日というスタイルなので、余計に番宣やイベントスポットばかりになっている印象を受けました。
RKBラジオ「RKBエキサイトホークス」
一方、週末土日もホークスの試合を中継するRKBラジオはさらにスポンサーが少なめで火曜が2社、水曜は1社、そして週末に至っては全編スポット(スポンサー無し)という状況になっています。この影響か、実は2024年度より週末の15時台は競馬中継を1時間放送するため、野球中継が中断される事態に。更に土曜日は試合展開にかかわらず16時59分で強制終了するケースもあり、17時以降のレギュラー番組を優先させる方針に代わっているようです。九州では野球中継のニーズが薄いのか、それとも昨シーズンオフのホークスのゴタゴタに思うところがあったのか、週末独占というストロングポイントを生かせているかいささか疑問です。
TBCラジオ「TBCパワフルベースボール」
東北楽天ゴールデンイーグルスのホームゲームを実況中継するTBC東北放送もまたスポンサーは少なめ。賃貸業の平和情報住宅センターや中古車買い取りのティーバイティーガレージのスポンサーが多いですね。確かイメージキャラクターはBIGBOSSだったはずですが…。
こちらも週末のスポンサーが1社のみ、この影響か15時台に競馬中継を入れています。日曜はまるまる1時間つぶれるので大事なところが聞けない可能性もあるわけですが、スポンサー面を考えるとこの中断をどうにかするのは難しいんでしょうね。
そのほか&まとめ
今回は地元球団があり、自社制作で中継を行うラジオ局のスポンサーを取り上げましたが、それ以外にこれらの放送をネットするローカル局でも動きがありました。これまで水曜から金曜まで野球中継をネットしていたMBCラジオ、RSKラジオ、WBSラジオがそれぞれ金曜のみのネットに変更。RSKでは水曜と木曜の跡地に自社制作の生放送を編成、そのうちの一つが民放連でも高評価を受け、全国にリスナーを持つ「OKYAAAMA!~大都会オカヤマな夜~」となっています。野球中継の縮小は今後も続くんでしょうね。それでも地元球団をもつラジオ局がこの先どこまで踏ん張れるのか、注目したいところです。参考までに2024年シーズンのスポンサーはこちら。土曜日にも中継枠のあるKRYラジオがやたらスポンサーが多い。RKBやTBCよりすごくないか?