どうもです。久々の本紹介、今回は加藤実秋著・「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」です。
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作者プロフィール
まずは加藤実秋氏のプロフィールから。1966年東京生まれで。2003年、37歳の時に「インディゴの夜」が第10回の創元推理短編賞を受賞したことで本格的な小説家デビューを果たします。これまでキャラクターを生かした奇抜な設定のミステリーを多く手掛けている印象がありますね。
この作品も退職した刑事が集うシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」を舞台に、一般人となったおじさんたちが新人の女性刑事を振り回して大活躍するというお話。キャッチーな設定ということもあり人気が出そうですね。ちなみにこの作品はシリーズ化されており、続編に「メゾン・ド・ポリス 退職刑事とエリート警視」が刊行されていますのでこちらもぜひ参考になさってください。
あらすじ
憧れの刑事課に配属された新人の牧野ひよりだったが、任せられる仕事と言えば雑用ばかり。何か発言をしても空回りする毎日。そんな中、柳町北署管内で男性が火だるまになって焼け死ぬ動画が配信される。4年前に発生した「デスダンス事件」の模倣と見られ、現場での捜査を懇願するひよりに押し切られる形で、刑事課長の新木は4年前にその事件を捜査していた夏目惣一郎という男に話を聞くようメモを渡す。そこは古びた洋館で、退職した警察官が住むシェアハウス、人呼んで「メゾン・ド・ポリス」というところだった。
ここにはシェアハウスの大家で元警視庁のお偉方の伊達を筆頭に、熱血漢の元刑事・迫田、元科警研の藤堂、ハウスの管理人で元警察署の総務部で働いていた高平に加え、雑用係として夏目が住み込みで働いている。尋ねてきたひよりに対し、夏目は無関心を装うが、迫田や藤堂たちに押されてしぶしぶひよりとバディを組むことになる。最初はひよりと衝突することの多かった夏目だったが、ひよりの事件に対する熱意に徐々に感化されていき、刑事の勘を取り戻して事件を解決へと導いていく。
この事件をきっかけに刑事魂が再燃した迫田たちは、ひよりを巻き込んであちらこちらの事件に首を突っ込んでいくことになるが、やがて夏目が職を辞する要因となった2年前の事件、そして11年前のひよりの父親・尚人が失踪した事件がひよりたちの前に立ちはだかる。
登場人物・相関図
- 牧野ひより
- 26歳、警視庁柳町北署所属の巡査。念願かなって刑事課に配属されたが雑用ばかりだった中、「メゾン・ド・ポリス」の住人達と出会ったことで彼らに振り回されながらも事件の捜査に携わるようになる。父が失踪した当時、捜索願を出した時に刑事に親切にしてもらったことが警察官を目指す動機となった。父に対してはもともといい印象を持っていなかったが、失踪後はさらに嫌悪感を持つようになっている。
- 夏目惣一郎
- 52歳。かつては捜査一課の有能な捜査員だったがある事件での失態により刑事を辞職。失意の中伊達に拾われて「メゾン・ド・ポリス」で雑用係を務めている。常にエプロン姿。考え事をする時にはアイロンがけを行う。「基本中の基本」が口癖。
- 迫田保
- 元・柳町北署の刑事。熱血漢で仕事に夢中だったため、愛想をつかした妻に定年後、離婚届を突きつけられて「メゾン・ド・ポリス」に入居する。ひよりを「ひよっこ」と呼ぶ。柔道では黒帯の猛者。
- 藤堂雅人
- 元・警察庁の科警研にいた。博士号持ち、英語やドイツ語もペラペラのインテリだが、浮気癖があり3度離婚している。ひよりを「ひよこちゃん」と呼びキザな言葉をかける。定年退職後は「メゾン・ド・ポリス」に入居した。現在も論文発表などの研究を趣味で続けており、部屋はラボと化している。
- 高平厚彦
- 中野東署の総務部に勤めていた。定年退職後は「メゾン・ド・ポリス」で管理人兼事務長を務める。常にアームカバーを付けており、しぐさがおばさんっぽい。捜査には繰り出さずに「メゾン・ド・ポリス」の留守番をすることが多い。
- 伊達有嗣
- 「メゾン・ド・ポリス」の大家でかつては警視庁のお偉いさん。捜査二課では優秀な捜査官でもあった。裏で手を回し、「メゾン・ド・ポリス」に事件の捜査をさせている。
- 原田
- 警視庁柳町北署所属でひよりの先輩刑事。新人だったころは迫田の部下でみっちりと鍛えられた。
- 新木
- 警視庁柳町北署所属の刑事課長。伊達に頭が上がらずひよりを「メゾン・ド・ポリス」の捜査に協力させる。
- 牧野尚人
- 大手ゼネコン・高遠建設で働いていた。ひよりの誕生日よりも仕事を優先するなど家庭を顧みないような仕事人間だった。書き置きを残して失踪後、消息は明らかになっていなかったが…。
- 池原信吾
- 高遠建設経理部に勤めていた。ある事件で夏目の取り調べを否定していたが、その後自殺。この件が夏目が刑事を辞するきっかけとなっている。
- 池原美沙
- 池原信吾の妻。夫を死に追いやった夏目を憎んでいる。しかし自らが病に倒れ、余命宣告を受ける中で夏目にもう一度事件の捜査をするよう要請する。
- 瀬川草介
- バー「ICE MOON」のマスター。おっとりとした穏やかな物腰にメガネ姿の「草食男子」を思わせる風貌。10日に1度は来るひよりのお目当ての相手であり聞き上手な一面もある一方、詳細なプロフィールは不明。「男子ではない」という言葉や、1982年公開の映画をよく知っていたりとそこそこ年齢は行っている模様。
- ナナ
- 27歳の丸の内に通うOL。ひより同様「ICE MOON」に草介目当てで訪れる常連。ひよりが草介に近づこうとすると突如現れてバッグで殴ったりなどの実力行使に出る。普段は女子力が高いが、酔っぱらうとドスの聴いた声を出したり、さまざまな地方の方言で話し出したりする。本人曰く「転勤族家庭で育ったから」らしいが真偽のほどは不明。
夏目が刑事をやめるきっかけとなった事件
夏目惣一郎はかつては捜査一課でも有能な捜査員でさまざまな事件を解決してきました。しかし2年前に起きた射殺事件の裏に商店街の再開発に絡む暴力団と大手ゼネコン・高遠建設の癒着があるとにらんだ夏目は、高遠建設経理部でこの再開発計画を担当していた池原信吾を取り調べます。「何も知らない」の一点張りだった池原に裏があると感じた夏目はさらに追及をしようとしたのですが、その結果池原は自ら命を絶ってしまいます。
結局、夏目の訴えた高遠建設の問題は証拠をつかむことが出来ないまま、さらに池原を死に追いやったという後悔もあり、刑事をやめざるを得なかったのです。
しかし、この事件をあきらめきれない夏目。そんな折、池原の妻である美沙が「メゾン・ド・ポリス」にやってきます。美沙は最初、夏目が墓参りに来ても追い返してしまうほど彼を恨んでいました。しかし自らがガンに侵され、余命宣告を受けた中、夏目の言葉を信じもう一度捜査するようにお願いするのです。美沙の命というタイムリミットが迫る中、ひより、夏目たちは事件の真相にたどり着くことが出来るのでしょうか?
ひよりの父の失踪事件
そしてもう一つ、10年前に書き置きを残して姿を消してしまったひよりの父親・尚人。あれ以降ひよりの家族は苦労を強いられ、ひよりは今でも父親に対する嫌悪感を持ち続けています。そして、その父親が働いていたのが夏目が追いかけている事件と同じ高遠建設。これは偶然なのか、それとも…。果たして尚人はなぜ姿を消したのか、そしてどこにいるのか。
「1章ごとに完結する物語と並行して縦軸となる事件」。いかにもドラマ的な感じですね。