今回は昨年2月に取り上げた”FM転換実証実験”の続編をお届けします。災害対策や難聴取対策にお金の問題が絡み、2028年秋のラジオ局の免許更新時にAMラジオ局がFM局に転換することを発表して1年以上たちます。そのための実証実験が2024年2月から行われてきました。総務省が昨年12月に改定した「AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針」も合わせて今後この動きはどうなるのかを見ていきたいと思います。なお、FM局に転換への大まかな経緯・実験を行っている局(以下”特例適用局”と表記)は下記ページで詳細にまとめております。合わせてどうぞ。

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概要
今回実証実験を行った特例適用局の13社は2023年1月に公募が呼びかけられた「第1次」実証実験への参加を表明したラジオ局で、2023年11月の免許更新時に特例措置が認められました。これは停波の期間が6ヶ月以上となる場合、”免許取消事由”になることが電波法第76条第4項第1号に規定されているのですが、実証実験を行っている局は特例として除外されるというものです。「第1次」実証実験は早いところで2024年の2月から始まり、2025年1月31日までの期間行われていました。
この「第1次」実証実験ではMROラジオが能登半島での震災の影響で当初4月1日から実験を開始する予定が8月1日に延期され、更に実験中の9月には特別警報が発令されるほどの豪雨により甚大な影響が出ました。上記案にある「大規模災害の発生等、従来のAM放送により広く受信者に重要な情報を伝達する必要性が生じた場合には、できるだけ速やかにAM放送を再開することが求められる」考え方に基づき、9月21日~11月10日の期間、一時的に輪島局のAM放送を再開していました。MBCラジオでも台風10号に伴う暴風と波浪の特別警報が発表された2024年8月28日から9月4日まで阿久根局、川内局、大口局のAM放送を一時再開しました。
基本方針の改定
「第1次」実証実験を行っている中、総務省では「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」における議論を踏まえ、AM局の運用休止の特例措置の適用を受けるための要件、手続等を示す「AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針」の改定案を作成、2024年12月に公開されました。
主に更新されたのは以下の通りです。特に2番目に示す特例措置の条件が大きく緩和されました。
2回目の特例措置の適用期間
実証実験の考え方案で示されていた「第2次」実証実験の期間が新たに追加されています。抜粋すると「特例措置の適用期間は2025年9月1日から2026年10月31日までとする。特例適用局の運用休止は、2025年12月1日以降に開始し、2026年9月30日までに終了すること」。更に「特例措置の適用期間の終了後、特例措置の適用を受ける民間AMラジオ放送事業者(以下「特例措置適用事業者」という。)が当該適用期間の延長を希望するときは、総務省が必要と認める場合に、当該適用期間を延長することができる。」とあり、これを受けて「第1次」実証実験を行っている特例適用局の13社34中継局はすべて休止期間を「第2次」実証実験の運用休止期限である2026年9月30日まで延長することを発表しています。

特例適用局が適切に選定されていること
「特例適用局以外のAM局、FM局(特例措置の適用期間中に新設を計画するFM局を含む。)及び特例適用局の放送を特例適用局以外から受信し再送信するケーブルテレビによるカバーが地理的・地形的特性、経済合理性などの観点から特例適用局がカバーする一部の地域において困難な場合にあっては、radiko等のインターネット配信サービスによるカバーを考慮することができる。」という文言が追加されました。1回目では”遅延等が避けられない”などの理由で対象外だったradikoでのカバーもOKとなりました。これにより「放送対象地域における、特例適用局の運用休止を行った場合にインターネット配信サービスのみで聴取が可能となる世帯数及びその比率」が特例適用を受けるための要件に入り、1回目の特例措置を見送った文化放送やTBSラジオ、ABCラジオなどもパブリックコメントで基本的に賛同する旨を表明しています。

2028年までにFM転換を行うAMラジオ局44社のうち、「第1次」実証実験を行ったのは13社に過ぎなかったわけですが、今回の基本方針の改定を受け「第2次」実証実験にはほとんどのAMラジオ局が参加するものと思われます。また、「第1次」実証実験を行っている13社でも、親局も含めたAMを全局停止している山口放送以外は追加でほかの中継局を停止する可能性があります。特に東海ラジオは「第1次」実証実験でエリアカバー率の要件を満たしておらず”不適”になった中継局がありましたが、radikoでのカバーが考慮されるとなると「第2次」で再申請するという流れになりそうです。
2025年もFM転換に向けた動きは更に加速するかもしれませんね。